驚異的進化を遂げたモルディブの国際空港の話

今回はインド洋の島国、モルディブの首都にあるヴェラナ国際空港のお話です。
こちらの動画も合わせてご覧いただければ嬉しいです!

シンガポール航空A350で到着!

非常に小さな島々からなるモルディブ、その面積は島全てをかき集めてもシンガポールに及ばないほどの小ささです。

マレ国際空港とも呼ばれるモルディブ最大の空港ヴェラナ国際空港も、環礁の小島にギリギリ納められる形で建設されており、衛星写真ではまるで空母のような見た目です。

私がヴェラナ国際空港を訪れた2025年2月、シンガポール航空のエアバスA350で到着すると、空港には立派なターミナルビルがあったものの、飛行機はその手前で停止。開業準備が進む新ターミナルを横目に、バスで小さな現ターミナルへ運ばれました。

2025年7月に開業予定の新ターミナルは、現ターミナルの約7倍の処理能力があるそう。

またこれまで1つもなかったボーディングブリッジも6機分整備される予定です。

777-300ERやA340-300などの大型機も多く発着し、1泊数十万円も支払うリゾート客も訪れるモルディブの空の玄関口で、これまで全便がタラップで乗客を乗り降りさせていたというのは驚きです。
しかしヴェラナ国際空港は、モルディブ特有の土地が狭すぎる問題のせいで、少し前まではもっと大変な運用を強いられていた歴史がありました。

2008年→2025年ヴェラナ国際空港の変化

Before imageAfter image

Google Earthの過去の衛星写真を見られる機能を使って過去のヴェラナ国際空港を見てみましょう。
左が2008年3月、右が2025年6月の衛星写真です。
埋め立てにより敷地が大幅拡張されており、滑走路や駐機場が新設されているのが分かりますね。
また詳しい方なら、2008年の写真はこれを見ただけでかなり大変そうな空港だということに気付けるかと思います…

ヴェラナ国際空港 かつての激ヤバ運用

こちらは2019年1月の写真なのですが、かつてヴェラナ国際空港の大変さを物語っているので紹介したいと思います。
2019年当時は新滑走路がまだ運用開始前で、Xと描いてあるように使用できないことになっています。

見ると駐機場が大型機で大混雑しており、そして滑走路との距離が非常に近いですね。
一部の飛行機は駐機上のスペースに収めるために、斜めに駐機していることが分かります。
また滑走路上には飛行機が2機向かい合っていて、どういう状況??と思ってしまいますね。

状況を考察するため吹き流しを見ると、この時空港はおそらくRWY36運用で、画像右から左向きに離着陸が行われていると推測できます。
また滑走路上の2機の内、左側の機体(エーデルワイス航空のA330-300?)にはトーイングトラクターが付いていることから、プッシュバック直後の出発機であることが分かります。
と、いうことはもう一方の機体(アリタリア航空のA330-200?)は駐機場に入る直前の到着機ですね。(両方出発機だと仮定すると状況的に不自然なため)

このことから推測できるこの写真の状況は…
①到着機のアリタリア航空機がRWY36に着陸
②到着機は滑走路端までタキシングしRWY18側のターニングパッドでUターン
③到着機は反対側の滑走路端までタキシングしRWY36側のターニングパッドで再びUターン
④出発機のエーデルワイス航空機がプッシュバック

ということが行われた後の瞬間を切り取ったものだと思われます。

↓赤:到着機 黄:出発機↓

到着機のUターンについては、ターニングパッドまで行かずに途中の誘導路への分岐を使用した可能性もありますが、ともかく2回Uターンしているものと思われます。
(そう仮定しないと出発機との位置関係のつじつまが合わないと思うのですが、他の可能性を思いついた方は教えてください)

個人的には、滑走路上に出発機が直接プッシュバックしている時点で発狂ものです。狭いことで有名な宮古空港などを含め、プッシュバックは駐機場または誘導路内で行うのが当たり前ですからね…
また到着機が滑走路上をあっちこっちタキシングしているのも普通ではないですよね。

この衛星写真1枚から、当時のヴェラナ国際空港は飛行機が離着陸以外で滑走路を占有している時間が長く、効率的な運用ができていないことが分かります。

まとめると、昔のヴェラナ国際空港の問題点は…
・滑走路と駐機場が近すぎる!
・駐機場が狭すぎる!
・平行誘導路がない!

それにより発生していた激ヤバ運用の例は…
・発着機が滑走路上を長時間走行!
・出発機が滑走路に直接プッシュバック!
・大規模なターミナルを建設できない!
・大型機が多数発着するにも関わらず全便タラップ乗降!

ヴェラナ国際空港の変遷

発着する数々の大型機とは対照的に、設備があまりにも貧弱だったヴェラナ国際空港がどのように進化していったのか、衛星写真で見ていきましょう!

2008年3月
ヴェラナ国際空港は1960年に開港し、1970年代から始まったリゾートブームの影響で昔から、ボーイング747を含む大型機が多く飛来していました。

2013年2月
2010年にヴェラナ国際空港は民営化され、拡張計画が開始されました。
南東(画像右上)と、北(画像左)で埋め立て工事が進行していることが分かりますね。

2017年7月
新滑走路のシルエットがうっすらと浮かび上がっていますね。
また西側(画像下)ではターミナル以外の施設の撤去が進められており、駐機場の拡張・新ターミナルの建設準備が進められています。

2018年5月
新滑走路の舗装が進められています。
中央部に一部舗装が行われていない部分がありますが、これはこの場所に当時の水上機ターミナルがあったためです。
ちなみに2018年には、建設中の新滑走路への誤着陸事案と駐機場での機体接触事案が発生しています。

2019年1月
先ほど紹介した激ヤバ運用の衛星写真です。
この頃までに新滑走路の建設はほぼ完了しています。しかし、水上機ターミナルの移設・旧ターミナルの解体に時間がかかったため、運用開始は2022年となりました。

2022年12月
旧水上機ターミナルが解体され、新滑走路が運用開始されました。
旧滑走路は誘導路として使用されています。
駐機場が南側(画像右)に拡張され、新滑走路の東側(画像上)にも駐機場が新設されています。

2025年6月
ヴェラナ国際空港の問題点3点が解消し、かつては考えられなかった、ボーディングブリッジ付きの大型ターミナルの建設が進んでいます。
驚異的進化を遂げたヴェラナ国際空港は、間もなく新ターミナルが完成すれば、非の打ち所のない世界標準の国際空港となりますね✨

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